ピアノ演奏では、指の技術だけでなく楽譜の読み取り能力も非常に重要です。
耳コピーだけで曲を弾くことも可能ですが、楽譜を読むことにより曲を早く、そして正確に理解し演奏することができます。
ここでは、楽譜の読み方、特にト音記号とヘ音記号の解読方法、一般的な記号の意味と、それらを使っての演奏テクニックについて解説します。
楽譜の基本的なこと
ソロピアノのための楽譜は、通常二行で一組として記載され、上の行が右手で下の行が左手のためのものです。
右手は主にト音記号を用い、左手はヘ音記号を用います。
これは、演奏される音の高さが異なるためです。
しかし、連弾曲では両手がト音記号やヘ音記号を使うこともあります。
これらの記号は楽譜の左端に表示され、右に向かって読んでいくことになります。
音の位置
ト音記号では、五線譜の一番下にある短い線上の音が中央のドです。
下から上へと音が高くなり、ドから始まりレ、ミ、ファ、ソ、ラ、シと続きます。
これを超えると再びドから始まる繰り返しになります。
ヘ音記号の場合、五線譜のすぐ上の短い線上に中央のドがあります。
各音符は基準となる音を元に覚えることが有効です。
初めは一つずつ数える方法もありますが、速読のためには覚えるべきです。
例えば、中央のド、ソ、高いドなどを基準にして近い音を素早く識別できます。
また、和音を利用して覚える方法も有効です。
例として、ト音記号の中央のド、ミ、ソの和音や、ソ、シ、レの和音はよく使用されます。
これらを利用して和音の位置を覚えると便利です。
ヘ音記号も同様に、和音を使って覚えることが推奨されます。
楽譜の記号自体を見て覚える方法もあります。
たとえば、ヘ音記号の右側にある二つの点の間がファの音であり、下から二番目と三番目の線の間は中央のドです。
ト音記号の場合、書き始めの小さな円がソの音に対応します。
これらの方法を組み合わせて、多くの曲を読み解きながら音の高さを覚えていきましょう。
音符と休符の長さ
ピアノの楽譜を読む上で次に重要なのは、音符や休符の長さを把握することです。
全音符は最も長い音符で、4拍を持続します。
これは白くて何のマークもないことが特徴です。
特に4分の4拍子では、1小節全てを占める形になります。
全音符に次ぐ長さは付点二分音符で、これは3拍を保持し、棒に横の点が付いています。
その下にある二分音符は、2拍持続し、白く棒が付いているものです。
全音符の半分の長さです。
さらに、これを半分にした四分音符は、黒く棒がついて1拍の長さです。
ここに点がつくと1.5拍の付点四分音符になります。
八分音符は四分音符の半分で、0.5拍を持ち、斜めの線が旗のようにつきます。
旗の本数が増えるほど音符は短くなり、十六分音符や三十二分音符となります。
これらの音符は点がつくと1.5倍の長さに伸びることも理解しておくと良いでしょう。
棒や点の向きは五線の中心を境に上下が逆になりますが、音符の種類自体に変わりはありません。
連続する八分音符や十六分音符は繋げて書かれることが多く、八分音符が3つ繋がり、上か下に3の数字がある場合は三連符を示します。
これは1拍の中で3つの音を奏でることを意味します。
休符についても、全休符や二分休符など、音符と同様の名前と長さがあります。
例えば、全休符は小さな黒い長方形で、五線譜の上から二番目の線にぶら下がっています。
四分休符は波打つような形で、「そ」の形を崩したような姿です。
八分休符はアルファベットの「y」のような形で、旗が増えると長さが半分になります。
これらの記号を覚えるのは大変かもしれませんが、音源がある曲であれば、聴きながら楽譜を確認し、長さを覚えるのが効果的です。
また、メロディーを口ずさみながら演奏することで、より自然に楽譜を理解できるようになります。
臨時記号とは?
楽譜において、音符の左側に記される記号は臨時記号です。
これは音の高さを変更するためのものです。
最も一般的な臨時記号は、「♯」シャープです。
これは音を半音高くします。
たとえば、ファにシャープがつけば、隣の黒鍵(ファ♯)を弾きます。
「♭」はフラットと読み、音を半音下げることを意味します。
この記号が付いた音は、左隣の黒鍵を弾くことになります。
しかし、例外もあります。
例えば、ミにシャープが付いた場合、隣に黒鍵がないので、次の白鍵であるファを弾きます。
また、シにシャープがつけば次のド、ファにフラットがつけばミを弾きます。
さらに、「♭♭」はダブルフラットと呼ばれ、音を一音(二半音)下げます。
ラにダブルフラットがある場合、ソの音と同じになります。
一方で、「×」はダブルシャープと呼ばれ、音を一音上げる効果があります。
ソにダブルシャープがあれば、ラの音を弾きます。
これらの記号は一度導入されると、その小節内では持続します。
例えば、ミにフラットが付けられた場合、その小節内で再度ミが現れたときは、改めて記号がなくてもミフラットとして扱います。
次の小節では、特に記号がなければ元のミの音に戻ります。
ナチュラル記号「♮」は、臨時記号による変更を解除し、元の音高に戻す役割を持ちます。
これは、同じ小節内でも別のオクターブでの音、あるいは次の小節で臨時記号の効果を打ち消すために用います。
臨時記号の出現は、同じ音にのみ影響を及ぼし、異なるオクターブの音には影響しません。
そのため、同じ小節内で異なる高さの同じ音名が現れた場合、それぞれに適切な臨時記号が必要です。
調号の理解と活用
調号は楽譜のト音記号やヘ音記号の横に配置され、楽譜全体に適用される臨時記号です。
これにより、特定の音が全ての小節において自動的に半音上げられたり下げられたりします。
調号は、音楽の調を示し、各調には特定のシャープやフラットの数が割り当てられています。例えば、シャープがない場合はハ長調またはイ短調となります。
●シャープなし:ハ長調(C major)、イ短調(A minor)
●シャープ一つ:ト長調(G major)、ホ短調(E minor)
●フラット一つ:ヘ長調(F major)、ニ短調(D minor)
シャープが増えるにつれて、ファ、ド、ソ、レ、ラ、ミ、シの順に調整されます。
フラットの場合、シ、ミ、ラ、レ、ソ、ド、ファが下げられます。
このパターンに従って、音楽の調が定義されます。
例えば、シャープが二つある場合、ニ長調(D major)またはロ短調(B minor)となります。
このように、調号には明確なルールがあり、特定の組み合わせのみが存在します。
これらの情報を覚えておくと、楽譜を読む際にどの音が自動的に変更されるのかを瞬時に把握できます。
これは特に、Jポップなどの現代音楽で原曲通りに演奏したい場合に重要です。
ただし、演奏が困難な場合は、調号が少ない簡単な調へと編曲された楽譜を使うことも一つの手です。
これにより、演奏の難易度を下げつつ楽曲を楽しむことが可能となります。
拍子記号の基本
曲の最初に見られるト音記号やヘ音記号の隣にある「C」のような記号や、分数形式の数字が拍子記号です。
これは、一小節を構成するリズムのパターンを定義します。
「C」の記号は「コモンタイム」とも呼ばれ、4分の4拍子を示し、一小節に四分音符が4つ入ることを意味します。
これは最も一般的な拍子の一つです。
分数形式の拍子記号では、分子が一小節に含まれる拍の数、分母が一拍の基本となる音符の種類を表します。
例えば、4分の3拍子は一小節に四分音符が3つ、8分の6拍子は八分音符が6つ入ります。
これらの拍子を理解するには、数え方に注意を払うと良いでしょう。
4分の4拍子では、「1、2、3、4」と均等に数え、各拍を均等に演奏します。
4分の3拍子では「1、2、3」と数え、このリズムで小節を進めます。
特に8分の6拍子のような複合拍子では、拍の強弱にも注意が必要です。
通常、1拍目に最も強いアクセントを置き、中間の拍に軽いアクセントを置くことが一般的です。
例えば、「1、2、3、4、5、6」と数える際に、1と4の拍を強調します。
拍子記号は曲のリズム感を理解し、適切に表現するための重要な要素です。
これをマスターすることで、楽譜のリズムを正確に読み取り、感情豊かに演奏することが可能になります。
まとめ
楽譜の読み取り能力は、音楽をより深く理解する上で非常に重要です。
また、録音された演奏を聴きながら楽譜を追うことも、記号の意味を理解するのに役立ちます。
このようにして、自分自身で情報を調べ、楽譜に書き込み、実際に演奏することで、音楽用語や記号は徐々に頭に入っていくでしょう。
そして、それは単に記憶するだけではなく、感覚的に音楽を感じる力を養うことにもつながります。